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とある天狗と人形使い

と言う訳で、天魔様第三話・・・・・・道草さんの分を入れると第四話かしら。
天魔様は若干色んな『欲』が強めです。チャックさん紫みたいな関係だとなお良し。












かちゃり、とソーサーの上に置かれたティーカップが小さく音を立てる。


「・・・・・・つまり、その天魔とか言うのが原因な訳ね」


森に住む魔法使いの少女、アリス・マーガトロイドはそう言って小さく溜め息を吐いた。
かく言う僕も、天魔を止められなかった身としては肩身の狭い思いだ。


「それで・・・・・・君の家はどんな具合だい?」
「散々よ。窓ガラスは割れるし天井は吹き飛ぶし・・・・・・私は家にいなかったからまだよかったものの、
住めるような状態じゃなくなってるわ」


アリスはそう、溜め息交じりに口にする。
災難だとしか言いようの無い事態だ。
それを引き起こしたのが知り合いなのだから、余計に困る。


「修理はどうする?」
「そうね・・・・・・とりあえず応急処置は人形達にやらせてるんだけど・・・・・・人形は一応大半は無事だったしね」


ゴリアテが・・・・・・と彼女は呟いていたが、何の事だかは分からないので気にしないでおく。
ともあれ、建設などの知識の無いアリスに家を直す事は出来ないだろう。
人形を操っているのはあくまで彼女であり、人形に『家を建て直せ』と言った所で、
彼女自身がそのやり方を知らなければそれは実行不可能なのだ。


「しかし、その間住む場所が無いだろう?」
「・・・・・・ええ、そうね」


思い出したくなかったのだろうか。
アリスは、歯切れの悪い様子で肯定した。

しかしこうなると、僕としても放っておくのは気が引ける。
仕方ない、と・・・・・・僕は小さく嘆息した。


「アリス、よければここを提供しよう」
「え?」
「君の家を壊してしまったのは僕の友人だからね。このまま放っておくと言うのも寝覚めが悪い。
彼女を止められなかった事への侘びだと思ってくれ」
「え、あ・・・・・・で、でも・・・・・・」


アリスは、顔を赤くしてしどろもどろにそう呟く。
・・・・・・っと、いけない。僕とした事が配慮が足りなかったようだ。


「男と二人と言うのはさすがに抵抗があるだろうが・・・・・・君に妙な真似はしないと誓おう。
君は魔法使いだし、誓約でもしようか?」
「・・・・・・何と言うか、それはそれで腹が立つわね」


かぶり振り、アリスは半眼で僕を睨む。何か悪い事を言っただろうか。


「・・・・・・はぁ、まあいいわ。お世話になるわよ霖之助さん。
流石に、魔理沙の家は泊まろうと思っても泊まれないから」
「まあ、魔理沙の家は魔理沙以外が住める環境ではないからね」


魔導書と実験道具とキノコで埋もれた家だ。
主にキノコのおかげで、魔理沙以外が住める環境ではない。

しかし、ずっとここで暮らすという訳にも行かないだろう。
何らかの方法で家を直さなければならない。


「家はどうやって直すつもりだい?
建設の知識と言うと・・・・・・鬼や天人だろうかね。僕は知り合いにはいないが・・・・・・」
「知ってはいるけど、仲がいいわけじゃないわよ。むしろ、反りが合わないわ」


まあ、しっかり者のアリスの事だ。享楽的な種族と言われる彼らとは合わないのも道理だろう。
しかし、どちらも妖怪の山と関係のある者達・・・・・・となれば、恐らく―――


「天魔なら知り合いにいるだろうね。まあ、いつ来るか分かったものではないが」
「ええ・・・・・・まあ、来たら言い聞かせておいて。流石に、私もここに居続けるなんて厚かましい真似は出来ないわ」


・・・・・・どうやら随分と人間、いや妖怪が出来ているようだ。
これほどまでに常識的かつ人道的な反応は久しぶりに見た気がする。
まあ、本来ならこれが普通なのだろうが。


「悪いね。まあ、家が直るまでは好きなだけいてくれて構わないよ」
「ええ、ありがとう霖之助さん。助かるわ」
「なに、礼には及ばないよ」


どちらかと言えば、こちらからの侘びだからね。
小さく嘆息し、僕は立ち上がった。
僕は必要ないが、アリスは三食をきちんと取るという規則正しい生活を送っている。
彼女がここに泊まるとなれば、食事を作らなければならないだろう。

と、その事に気付いたのか、アリスも立ち上がった。


「悪いわね、霖之助さん。私も手伝うわ」
「いや、そこまでは必要ない・・・・・・と言いたい所だが、ここは頼んでおこうか」
「ふふ・・・・・・ええ、お任せなさいな」


やはり一人暮らしをしているだけあって、それなりに自信があるのだろう。
得意気なその様子に苦笑し、僕は台所へと向かっていった。



















「ふむん」


香霖堂の上空に浮かび、天魔は小さくそう呟く。
一度山に戻ってからもう一度来てみれば、どうやら妙な事態になっているようだった。


「ま、うちが悪いんだけどねん」


バツが悪そうに、天魔は苦笑いと共に頬を掻く。
戦いを挑まれたのは久しぶりで、少々力の加減が効かなかったのだ。


「前は何時だったかな・・・・・・ああ、神奈子達が山に来た時だねん」


唐突に山の上に神社ごとやってきた守矢神社の面々。
だが、来た場所がいけなかった。
妖怪の山は天狗達の住む場所。彼女達は、唐突に現れた異物だったのだ。


「ま、うちは別に何でもよかったんだけど・・・・・・家とか潰れちゃった奴もいたしねん」


別に誰だろうと来るもの拒まずのつもりの天魔だったが、
そうなってしまうと天狗の頭領として黙っていると言う訳には行かなかったのだ。
故に天魔は戦いを挑んだ。
この国に深く名を残す二柱の神に、たった一人で。

いかに信仰が減っていたとは言え、二体の神を同時に相手にするのは流石に辛いものがあり、
後一歩の所まで追い詰めたものの、手痛い敗北を喫した。

今、守矢神社の者達が傲慢な天狗にさえ認められているのは、その闘いがあったからこそだ。
天狗と言えど、圧倒的な力の前には従う。


「あれは楽しい戦だったけど・・・・・・霖之助には心配されちゃったねぃ。
何で感謝されたのかは知らないけど」


からからと、天魔は笑う。
霊夢たちが神奈子や諏訪子に勝ち得たのは、天魔が『弾幕ごっこ』のルールを教えたからであり、
霖之助もそれに気付いていたのだが・・・・・・閑話休題。


「しっかし、どうしようかなん。うちの責任とは言え、あのまんまって言うのも面白くないねぃ。そう思わない?」
「・・・・・・いつも言ってますけど、他の天狗の前でそんな言葉遣いをしないでくださいよ?」


笑みと共に、天魔は振り返る。
そこに浮かんでいたのは、白い耳と尻尾を持つ白狼天狗―――犬走椛だった。
困ったように眉根を寄せている椛に、天魔は再び笑みを浮かべた。


「大丈夫だって。これは霖之助と大天狗とお前しか知らないからねん」
「本当に大丈夫なんですかね・・・・・・全く。それで、何か用ですか?」
「あーそうそう。友達のよしみで頼みがあるんだけど―――」
「嫌です」
「即答っ!?」


がーんと口で言いながら、ショックを受けたように後ずさる天魔。
傍目から見てもわざとらしいそれに、椛は小さく嘆息を漏らす。


「と言うか、命令と言う形にすればいいじゃないですか。それだったら私は従いますよ」
「それは嫌だって言ってるよねん?」
「・・・・・・全く、私は立場上、対等ではいられないんですから。それで、何ですか?」


―――天魔の笑顔が、一瞬揺らぐ。
けれどそれは一瞬で消え、天魔はにこやかに声を上げた。


「萃香を探して欲しいんだよん。椛の千里眼なら見つかるよねん?」
「いや、それぐらい自分でやって―――」
「森の人形使いの家を直してって言っといて! じゃ!」
「あ、ちょっと!?」


止める間もなく、天魔は香霖堂に向けて降下してゆく。
その背中を見送り、椛は深々と嘆息した。


「ああもう・・・・・・ホント、自分勝手なんだから・・・・・・」




















テーブルの上に乗せられた料理を凝視し、アリスは小さく呟く。


「・・・・・・ありえないわ」


一体何を想像していたというのか。
疑問と共に半眼を向けつつも、僕は茶碗にご飯を盛っていた。


「霖之助さん、どうして料理が上手いのよ・・・・・・それも私より」
「まあ、こんな所にいればやる事は少ないからね。自然と凝り性になってしまうものさ。
それに和食に限って言えばそうかも知れないが、洋食は恐らく君の方が上手だろう」
「それなら良いんだけどね・・・・・・って言うか、料理より商売に凝ったらどうなのよ」
「それは言わない約束だよん」
「そういう事だ。ではいただきます」
「いただ―――ッ!?」


驚いたのだろう、アリスは突如としてその場から飛び退った。
流石と言うか何と言うか、いつの間にかそこに座っていた天魔は膳の上の物が倒れないようにすぐさま机を押さえていたが。


「誰っ!」
「どーも、天魔だよん」
「軽ッ!?」


何と言うか、随分と軽快なやり取りだ。
嘆息し、僕は天魔に対して半眼を向けた。


「やあ天魔、山に帰ったのではなかったのかい?」
「帰ったよん。やる事終わって暇だから来ただけ」
「そうか、なら他に何か言う事は?」
「うん、そこのお醤油とって」


まあ分かってはいたが・・・・・・彼女何を言っても無駄なようだ。
再び嘆息し、茶碗を持ち上げる。
アリスは何か言いたそうにしていたが、結局持ち上げていた手をぱたりと下ろし、納得行かない様子で席に着いた。


「・・・・・・成程、こういうものなのね。天魔・・・・・・でいいかしら?」
「別にいいよん」
「私の家の事については?」
「あー・・・・・・うん、それは悪かった。久しぶりに闘うもんで、つい力を入れすぎちゃったんだよねん」


これは、少々意外だった。
アリスの言葉に、天魔はあっさりと自分の非を認めた。
いや、力ある妖怪はそれだけ紳士的だと言うから、ある意味では当然の事なのか。


「萃香に直すよう伝言しといたから、すぐに直ると思うよん」
「そう、ならいいわ。家が酒臭くならなきゃいいけど・・・・・・」
「あー、それはまぁ・・・・・・」
「まあ、貴方がマトモな妖怪でよかったわ。最近は人の物を盗んでおいて悪びれもしない魔法使いがいるから」
「あの子は人間だがね」
「そうだねん」


天魔とアリスが笑い、釣られて僕も小さく笑う。
どうなるかと思ってしまったが、思っていたよりも良好な関係になりそうだ。
と―――ふと、天魔は何処からか一つの酒瓶を取り出した。


「お近づきの印に、一杯どうかなん?」
「別にいいけど・・・・・・でも、宴会の時の天狗みたいに、大量に呑もうって言うなら遠慮するわよ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、風情を楽しんで呑むのも好きだからねん」


言って、天魔はこちらを見ながら僕の背後を指差した。
何をしようというのかを汲み取って、僕は窓の障子を開ける。
空に浮かぶのは、傾き始めた上弦の月だ。


「月で呑むにはまだ早いけど・・・・・・ま、今日は料理もあるしねん」
「なら、ご一緒しようかしら。日本酒はあんまり趣味じゃないんだけど・・・・・・まあ、偶にはいいかしらね」
「ふむ・・・・・・おや」


酒瓶を受け取ってみれば、随分と上等な品物であることが分かった。
いくら酒好きな天魔とは言え、侘びでこれほどの品を持ってくるだろうか。
そう思って視線を向けると、天魔は小さく苦笑を浮かべながら肩を竦めて見せた。


「萃香に頼み事をしちゃったからねぃ。折角の酒だ、持ってかれる位だったら霖之助と呑もうと思ってねん」
「成程、君らしいと言えば君らしいか」
「役得と思っておこうかしらね」
「家を壊されたんだから、どっこいどっこいさね」


・・・・・・素直なのか素直ではないのか。
いや、天魔はきっと嘘は言っていないのだろう。
ただ全てを語っていない、それだけの事だ。

親しき仲にも礼儀あり。
彼女が隠そうという事を、僕は知ろうとは思わない。


「さて、呑もうじゃないか。今日はお客さんも混じってだけどねん」


天魔は笑う。
気のせいか―――僕には、見慣れたそれが少しだけ翳っているようにも感じられた。




















床に転がって眠ってしまった霖之助とアリスを眺め、天魔は静かに杯を置いた。
最後の一杯も空になり、彼女は小さく溜め息を漏らす。


「欲を操るこの身が、まさか欲に振り回されようとは・・・・・・やれやれ、人生ってのは分からないものだねん」


―――いや、妖怪生かなん?
そんな小さな呟きと共に、天魔は四つん這いで移動して霖之助の横に正座した。
その頭をそっと膝の上に乗せ、溜め息を吐く。


「窮屈なのは嫌いだけど、それでもどうしてもやらないといけない」


天魔はそっと、霖之助の髪を梳く。
睡眠欲を操られた霖之助は、それでも目を覚ます事は無い。


「だから、妖怪の山に神様が来た時は、本当は嬉しかったんだよん。
お前の傍のこの空気が好きだから、もっと沢山ここに来れるって」


けれど、幻想郷に人妖が増えれば増えるほど、霖之助の周りの輪は大きくなっていった。
出会った頃は、他人の目を気にするほど人はいなかったと言うのに。


「独占欲なんてうちには似合わないかもしれないけど・・・・・・それでも、欲してしまう。
でもお前は、うちだけの友ではいてくれないんだよねん。それは、仕方の無い事だけど」


彼は天狗でも河童でも、妖怪でもない。
いつしか閉鎖的となっていた妖怪の山には、招く事も出来ないのだ。
そんな事を決めた覚えは、無かったというのに。


「・・・・・・だから強くなれ、霖之助。お前が『オレ』に一太刀でも浴びせられるほどに強くなれば、
お前は堂々と『オレ』に会いに来れる。そうすれば―――」


そっと、天魔は霖之助の眼鏡を外す。
誰もが殆ど見る事が無いであろう、霖之助の無防備な素顔を独占しながら。


「―――お前は、堂々とうちの友で在れるんだよん」


―――天魔は、小さく笑った。










其の身よ、欲望と共に在れ。
その刹那を愉しむ事こそが総て。
例えその先に破滅が見えようとも―――其れが享楽なれば。

唯、愉悦せよ。









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コメントの投稿

非公開コメント

No title

どうも、サイモンディス。
天魔様の霖之助鍛錬にかような意図があったとは……。やっぱさびしいんですかね。縦社会、いろいろと厳しそうですし。
椛にも本当は立場抜きで対等に接してほしいんだろうなぁ。

No title

超越者故の孤独とな。
もし眠る必要のないアリスが実は起きてて天満の独白を聞いてたりなんかするとウフフ。

次のゲストが誰なのか気になりますw
プロフィール

Allen

Author:Allen
動画を作ったりSS書いたりしてる創作生物です。
何か作ってないと生きていけません。

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リンクフリーですので、よろしければじゃんじゃんリンクして下さい。

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《allenseaze17★livedoor.com》
★を@に。でもこのメールあんまり見ないので、コメントとか拍手の方が連絡はつくような気がします。

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