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ドア・ノッカー

ども、Allenです。
動画でリクがあったのであんまり長くは無いですが書いてみました。
元ネタはknock!knock!と言う曲。リーチャさんに影響されてるなと思いつつ。













ふと、溜め息を吐く。
窓の無い図書館の中、パチュリーは静かに扉の方を見詰めていた。

―――また、迷っている内に時間が過ぎてしまった。

今が何時なのかは、よく分からない。
外とは隔絶された世界が、図書館の中にはある。
昼夜も関係なく、ここにあるのは、知識を探求するその意思だけ。


「その筈・・・・・・だったのだけど」


合理的ではない、とパチュリーは一人ごちる。
彼女はそれに気付いていて、それでいながら認めたくは無かった。

間延びのした、二つのノックの音が響くのを待っているなど。

カン、カンと・・・・・・そう、こんな風に。


「あ・・・・・・!」


その音に、パチュリーは思わず椅子から立ち上がっていた。
がたん、と乱暴に押し出された椅子が床にぶつかり音を立てる。


「やあ、入っても良いかな」
「え、ええ・・・・・・どうぞ」


扉を開けて入ってきたのは、銀髪に青い衣の男―――香霖堂店主、森近霖之助だった。
彼はよく、この大図書館で本を借りてゆく。
そして読み終わった本に関する考察を、パチュリーと語り合うのだ。

そう、そして・・・・・・パチュリーは、何時しかそれを待ち望むようになっていた。


(合理的ではないわ、そんな事)


理性は認めようとはしない。
けれどここ最近は、彼といる時にしか研究が進まないようになってしまった。
元々調べていた内容は頭の隅に追いやられ、彼が借りていった本と同じ内容を探してしまう。


「やあ、パチュリー。お邪魔させて貰うよ」
「ええ。今回の内容はどうだったかしら?」


そうやって内容を促す。
彼と話がしたいと・・・・・・無口で喘息なパチュリーが、本来ならば考える筈の無い思考。


(嗚呼、本当に・・・・・・どうしてかしら)


頭は、理性はそう伝える。
それでも、自分の中の何かがそれを望んでしまっていた。


「人工で金剛石を作ると言う話だったが・・・・・・宝石は良く魔術の触媒に使われるね」
「ええ。賢者の石もそれに属するものだわ」
「ふむ。しかし、金剛石はそういった物に用いると言う話は聞かないな」
「加工がし難いのがまず一つね。それに、無色透明な宝石では属性の概念に欠けるわ。たとえば―――」


話は弾む。時間を忘れるほどに。
パチュリーが、それまでの憂鬱な感情を忘れてしまうほどに。

―――けれど。


「おや、もうこんな時間か」
「あ・・・・・・」
「済まないね、明日は魔理沙が来ると言っていたから・・・・・・残念だが、今日はお開きだ」


霖之助は、この図書館の停滞した時間とは関係ない。
彼は、彼の時間と日常の中で生きているのだ。
だから・・・・・・帰ってしまう。


「そう・・・・・・それじゃあ、その本は貸してあげるわ。また今度持ってきなさい」
「ああ、魔理沙には盗られないように注意するよ」


彼はそう笑顔で言う。
パチュリーがそっけなくそんな言葉をかけたとしても。
そして、彼は囁くのだ。


「今度は、君が僕の店に来てくれ。君なら何時でも歓迎するよ」


―――そんな、呪いの言葉を。




















パチュリー・ノーレッジが図書館の外に出る事はほとんど無い。
数少ない例は、レミリアに茶会に誘われた時。
そして、レミリアが主催したパーティに呼ばれた時などだ。
どちらにしろ、彼女自身の意思でそのドアに手を掛ける事はまず無いと言っても過言ではないだろう。

そんなパチュリーは、今日もそのドアをじっと見詰めていた。


(あれは・・・・・・一種、結界のようなものなのかしら)


外側と内側を区切る境界。
あながち、間違いと言う訳でもないのだろう。
こうやって、手を掛ける事すら出来ないのだから。

彼の言葉は、耳に残り続けている。
けれど、その言葉に従う事を魔法使いの理性が邪魔をした。
肝心な時には何もしないこの意思は、こんな時にばかり働くのだ。

―――そんな事は、する意味が無いと。

そんな自問自答を続けている内に時間は過ぎ、夜になり。
そしてまた、パチュリーは後悔する。
自分自身に愚痴を吐き、ドアに向けて恨めしげな視線を向けてから眠りに就く。


(あんなもの、無ければ良いのに)


その思考が果たしてどちらの思考なのか、分からないまま。




















「店主さんの所に行ってみないんですか?」


ある日、パチュリーは己の使い魔からそう問いかけられた。
一瞬動きを止めるが、魔法使いのパチュリーはその言葉に半眼を向ける。


「何故そんな事をする必要があるのかしら?」


意味が無い、理由が無いと。
魔法使いは、ただそう口にする。

パチュリーは、生まれた時から魔法使いであった。
知識を糧とし、魔力で呼吸してきた。
だからこそ、魔法使いの思考は彼女を縛る。

そう、彼の所に行く事など必要は―――


「行って来ていつもみたいに一緒に研究して来れば良いじゃないですか。
向こうにはパチュリー様も持ってないような資料もあるんでしょう?」


―――嗚呼、それは確かに合理的だ。

思わず納得してしまい、それがどうにも悔しくて。
パチュリーは手に持った本の背表紙で使い魔の頭を叩いていた。










ドアノブに手を掛け、パチュリーは考える。
彼の所に行くのが本当に利になるのかを、幾度も再確認してしまう。

今まで彼の誘いを無視し続けてきた自分が、どの面下げて彼に会いに行くのかと。
乖離した自分の想いを、無理やりに正当化して。
それが、本当に合理的だと判断されてしまう。

そう、だからあとちょっとなのだ。

その言葉は自分か、神か・・・・・・あるいは、悪魔の囁きか。


「・・・・・・やはり、ドアは結界か」


ただ開けるだけなのに、これほどの力が必要となってしまう。

ドアを開ければ。
ドアを開ければ。

乖離した二つの思いを噛み締め、物怖じした衝動を押しつぶし。
パチュリーは、ゆっくりと扉を押し開けた。


「やれやれ、世話が焼けるんですから」


そんな言葉を呟いた使い魔を、ドアを挟んだ世界の中に残して。




















思い悩んでいた期間がどれほどの損失だったかと考えて、パチュリーは小さく嘆息した。
言ってしまえば、大したものではない。

自分は魔法使いだ。無限に近い時間がある。
だから、悩んでいた数週間が一体何だと言うのだ、と。

無理矢理な正当化だったが、パチュリーは納得していた。
彼の所に行けば研究は進む。それで損失も取り戻せるだろう。

図書館の外に出ているパチュリーにぎょっとした視線を送る妖精メイドがいたが、
それに気付かないほどに彼女は浮かれていた。

―――が。


「・・・・・・そう言えば、忘れていたわね」


パチュリーは顔をしかめる。
その視線の先には、玄関ホールから外へ繋がる扉。

そう、結界はもう一つあったのだ。

そうして、パチュリーはまた扉の前で逡巡する。
既に理屈では納得している筈なのに、どうしてかその一歩を踏み出せない。

彼と同じ世界へ踏み出そうとするその一歩が、どうしても遠かった。


「パチェ、貴方何してるのよ」


と―――そんなパチュリーに、背後から問いかける声があった。
この館の主、レミリアだ。

パチュリーが振り返れば、彼女は呆れた表情を消して小さく笑みを浮かべてみせる。


「貴方にしては、随分と珍しい姿ね」
「どういう事かしら、レミィ」
「そのままの意味よ」


クスクスと笑い、レミリアはゆっくりと歩を進める。
その姿にパチュリーは怪訝そうな視線を向けるが、レミリアはそれに答えず呟く。


「面倒な生き物ねぇ、魔法使いって言うのは。一々理詰めしないといられないのだから」
「余計なお世話よ。それで、何か用かしら?」
「用と言うか、見かねたと言うか・・・・・・」


苦笑しつつ、レミリアはパチュリーの横に立つ。
共に扉の前に並びながら、彼女は腕を組んで笑っていた。


「パチェ、貴方は私の所に来るのに何か理由を必要とするかしら?」
「・・・・・・? 別に、必要ないでしょう。親友に会うのに何か理由が必要な訳?」
「ならば、同じ事じゃない。親友と読書友達。
あの男と私を同列で並べられるのも困るけど、そういう事じゃないのかしら?」


それは、核心を突く言葉でもあった。
思わず動きを止めてしまったパチュリーに、レミリアは肩を竦めて笑みを浮かべる。


「そう言えば、貴方は私に高説を垂れていた事があったわね。
結界には、開ける為の順序や方法がうんたらかんたら」
「・・・・・・何よ、あれだけ説明してあげたのに覚えてないの?」
「私はそんな事しなくても開けられるもの。でも、貴方はそうではないのでしょう?」


パチュリーが文句を言う前に、レミリアは言葉を続けてしまう。
その紅い瞳には、一体どのような運命が見えていると言うのか。


「魔法使いの癖に開け方が分からないのね」
「ちょっと、どういう事かしら? 結界の開け方ぐらい私は―――」
「ふむ。だから貴方達的には」


レミリアは、手を伸ばす。
その小さな拳を扉に当て―――コン、コンと。
そんな間延びのした、二つのノックの音が響く。


「―――こんな感じじゃないかしら?」
「・・・・・・あ・・・・・・」


聞き覚えのあるリズムが、耳朶を打つ。
パチュリーも扉にその拳を当て、同じようにコン、コンと叩く。
図書館のようにドア・ノッカーを打った訳ではない。
その音は、彼が打つあの音とは違うものだ。

けれど―――その音は、パチュリーの体に染み込むように響き渡った。
ドアノブに手を掛けてみれば、いとも簡単にそれを動かす事が出来る。


「・・・・・・そうか」


結界の中に入る方法が同じなら、出る方法も同じだった。
ただそれだけの事だったと思い知らされ、パチュリーは小さく苦笑した。

ずっと忘れようとしていた、彼に会いたいという思いをようやく噛み締め、パチュリーは呟く。


「・・・・・・行ってきます、レミィ」
「お土産を期待してるわよ、パチェ」


そして初めての言葉を口にし―――パチュリーは、外への扉を押し開けた。




















彼に会って話をして、一緒に魔法の研究をしよう。
そうすれば、二つの思いが満たされる。

日の当る道をゆっくりと歩きながら、パチュリーはそう小さく一人ごちた。

空を飛んで行けば一瞬かもしれないが、彼は歩くのが好きだと言っていた。
だから、少しだけでも彼と同じ世界を共有してみたい。


「結局、悪魔の囁きね」


あれは魔性の言葉だ。これは堕落と言ってしまっても良いだろう。
そう思いながらも、パチュリーは今の状態に満足していた。

魔法の研究も出来る、彼に会う事も出来る。
ならば、これ以上無いではないか。


「考えもしなかったけれど、外も悪いものじゃないのね」


風がそよぐ。
湖が光を反射する。
暢気な妖精達が空を飛んで行く。

眺める事の無かった景色を、パチュリーは静かに見上げていた。


「でも・・・・・・私はやっぱり中の方が好きかしら」


『暖かい』と『温かい』。あの停滞した世界は『温かい』だろうか。
やはりそちらの方が性に合っていると、パチュリーは小さく笑った。

だから、彼を呼ぼう。
こちらが来たのだから、貴方ももっとこちらに来なさいと、そう伝えよう。
この思いが何なのかは知らないが、温かいのだから間違いではない筈だ。

扉の開け方は知っている。
間延びした二つのノックが、パチュリー・ノーレッジと森近霖之助の世界を繋ぐ合言葉だ。

ノックのリズムで歩を進め、ゆっくりと彼の所へと向かってゆく。
身に染み付いたそのリズムが、パチュリーの心を軽くしてゆく。

―――そして彼の扉にノックするのだ。この慣れ親しんだリズムと共に。



















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